「—かしこみかしこみお返し申す」全文 すずめの戸締まり呪文セリフ意味の解説

すずめの戸締まり呪文セリフ「—かしこみかしこみお返し申す」意味と全文の解説

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新海誠監督の劇場最新作「すずめの戸締まり」

今作には、日本神話や神道、民俗学から発想を得た設定が沢山登場します。

特に今作は戸締まりの際に草太が唱える呪文のような「かけまくもかしこき日不見の神よー」から始まる呪文のようなセリフが印象的ですよね。

以下が、戸締まりをする際に草太が唱えるセリフの全文表記です。

かけまくもかしこき日不見(ひみず)の神よ。
遠つ御祖の産土よ
久しく拝領つかまつったこの山河
かしこみかしこみ、んでお返し申す。

日本語なのは分かりますが、昔の言葉で難しくて意味が分かりませんよね。

この「すずめの戸締まり」に出てくる、この呪文のようなセリフについて、深く掘り下げてみたいと思います。

この記事は、小説版と劇場版の「すずめの戸締まり」のネタバレが含まれますのでご注意ください。

※日本神話や神道については、筆者が調べた内容を要約して掲載していますので、解釈違いや情報の間違いなどあればご指摘ください。

目次

すずめの戸締まり呪文セリフ「—かしこみかしこみお返し申す」徹底解説

草太が唱える呪文セリフ全文|ひらがなでの読み方

まずは、先程の草太の呪文セリフを漢字とひらがな表記でおさらいしましょう。

かけまくもかしこき日不見(ひみず)の神よ。
遠つ御祖の産土よ
久しく拝領つかまつったこの山河
かしこみかしこみ、んでお返し申す。


かけまくもかしこきひみずのかみよ。
とおつみおやのうぶすなよ。
ひさしくはいりょうつかまつったこのやまかわ、
かしこみかしこみ、つつしんでおかえしもうす。

「かしこみかしこみー」は、神社などで聞き覚えがある方も多いかもしれませんが、これは「祝詞(のりと)」で、神道で神に対して唱える言葉です。

結婚式で神社での神前式を行った場合や、お祓いや厄払いなどをするときに、神主さんがこの「かしこみかしこみー」と唱えていますよね。

あれを「祝詞(のりと)」と言います。

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草太が唱える呪文セリフ|現代語訳

草太が唱える呪文セリフである祝詞を現代語訳すると、大体下記のような意味になります。

声に出して言うのも畏れ多い、日不見/ヒミズの神よ。
先祖代々の土地の神よ。
長い間借りていたこの山や河を
(最大限に畏れ敬い)恐れ多くも、謹んでお返しいたします。

より現代的に訳すと、

私たち人が直接ものを申すには恐れ多いほどの偉大な存在である神様に対して、最大級の畏敬の念を持って、お祈りをささげさせていただきます。

先祖代々の土地の神様、長い間借りていたこの山や河を謹んでお返しいたします。

という感じでしょうか。

草太が唱える呪文セリフ|「日不見の神」について

この祝詞の中の「日不見の神」について、筆者が調べた限りでは日本神話や神道に日不見の神が出てくるものはありませんでした。

日不見/ヒミズ」は、劇中で「ミミズ」と呼ばれているあの赤黒い不気味な物体のことだと思われます。

「産土(うぶすな)土地の神様」ということで、

  • 「日不見/ヒミズ」
  • 「産土(うぶすな)=土地の神様」

は、全て「ミミズ」のことだと言えそうです。

言葉と神道から、

  • 「日不見」は日を見ない=ミミズ
    →ずっと地中にいて目のないミミズ
  • 日不見の神=火水(ひみず)の神
    →森羅万象の源である火水(ひみず)

などの意味もありそうでしたが、全てがミミズと呼ばれる土地の神様を示していると考えて良さそうです。

▼上記2つの説についての考察はこちら
「かけまくもかしこき日不見の神よ」祝詞の考察。音や掛詞を重視する神道の意味|すずめの戸締まり

ではなぜ、戸締まりの際にこのような呪文セリフを述べるのか。

次からは、祝詞の現代語訳や意味を考察していきます。

草太が唱える呪文セリフ考察・解説|「ミミズ」とは?人間との関係性

私たちがよく知る地中に棲むあのミミズは、土を食べることで植物の育成に適した土壌を作り出す「有益な生物」として、農業の分野などで活用されています。

地中に住むミミズと同様に、後ろ戸の向こうにある「常世(つねよ)」を住処とし、一般人の目には見えない常世の「ミミズ」も、その土地で生まれた「善くないもの」を吸収する重要な存在として上手く共生しているのだと考えられます。

先祖代々の土地の神が住まう大地に人間が住み着き、いわば地上を借りて生活を営みはじめました。

地上に住まう人の心の重さやエネルギー、八百万の神を崇める神道の祈りを捧げるなどが上手くミミズを鎮め、人間とミミズは共存できていたのでしょう。

しかし各地域で人口が減少し、土地を鎮める「人の心の重さ」「人々の土地への祈り」が弱まった場合には、後ろ扉を閉じておく土地の力も同時に衰えてしまったのだと考えられます。

草太が唱える呪文セリフ考察・解説|土地を鎮める人間の心や祈り

人がいなくなり廃墟と化した街や建物に開かれた後ろ扉から、「目的も意志もない単なるミミズ」は這い出てきて「現世」に地震という災いをもたらすことになったと考えます。

「風の谷のナウシカ」における「腐海」と「王蟲」の関係と、多少似ている面があるかもしれませんね。

そのような背景から、閉じ師は「先祖代々の土地の神様」が住まう地上を借りて生活していた人間の代表として、

「長い間借りていたこの山や川をお返しします。どうか鎮まり常世へお帰りください」

という祈りと願いを込めて祝詞を唱えていたのでしょう。

草太の家系の「閉じ師」に代々伝わる戸締まりの呪文セリフであったのだと考察します。

新海監督があえて東日本大震災を描く、重たくも力強いメッセージが込められた覚悟の一作。
東日本大震災から11年でこのテーマを扱った善し悪しは判断できる立場じゃないですが、相当の覚悟を感じます。

賛否両論さまざまな意見があるかと思いますが、やはり新海監督の真骨頂はその映像美。
地震描写に抵抗がない方は、是非劇場でご覧頂くことをお勧めします。

今回、筆者は小説を読んでから劇場に足を運んだのですが、情報量が多く、かつ日本神話や神道にまつわる要素が物語のカギになっているので、文字で読んでから映像を見たことで理解が早かったなと感じました。

また「小説版 すずめの戸締まり」には、2011年に起こった地震だとハッキリと記載しており、映画では詳しく描かれていない情報が多々あります。

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もう映画をご覧になった方、初見の感動は映像で!という方は、映画を見た後に小説を読むと知識が補完・整理されてより深く理解できると思います。
エピローグは、端的ではありますが小説の方が映画よりもしっかり説明があるので分かりやすく、しばらく余韻に浸ってしまいました。

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