かがみの孤城スバル 血の記憶の意味を考察|マサムネとゲームの胸アツ友情話も

かがみの孤城

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2018年に本屋大賞を史上最多得票数で受賞し、累計発行部数は現在160万部を突破する、辻村深月のベストセラー小説「かがみの孤城」。

原作小説や漫画で出てくる、スバルの「血」の記憶。(映画にはなし)

唐突で生々しく違和感があり、読者からも賛否両論ありますが、あえて入れたことに、スバルの人物像を肉付けする「作者の意図」があるはず。

また、映画版だけ見た方には分かりにくかった「スバルの本名」「スバルとマサムネ」「ゲームと友情」にまつわる胸アツエピソードも。

この記事は、

  • 「スバル」血の記憶の意味を考察
  • 「スバル」の家庭環境や背景、心境について
  • 「スバル」の本名に隠された伏線
  • 「スバルとマサムネ」のゲームと友情エピソード

を解説していきます!

この記事には、小説版と映画版の「かがみの孤城」ネタバレが含まれますのでご注意ください。

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かがみの孤城スバル 血の記憶の意味を考察|スバルの「血の記憶」って何?

スバルの「血の記憶」って何?

原作・漫画既読者の中で賛否両論あるのが「スバルの血の記憶」描写。

アキがルールを破り、城にいたこころ以外の6人は狼に食べられます。

その時、城にいなくて難を逃れたこころが、皆を助けるために皆の墓標がある×印を探します。

スバルの墓標である×印に触れると、スバルの記憶がこころに流入してきました。

洗面所にいるスバルが1人で髪を脱色しているシーン。
タオルに付いた染み(恐らく脱色液のオキシドール)を見て「血のようだ」と感じ、

兄ちゃんの彼女の友達が、初めてセックスすると女は血が出るんだよ、と言っていたことを思い出して、少し笑う。あの子が血が出なかったのは、きっと初めてじゃなかったからだ。

出典:17年版単行本:P444、21年文庫版:下巻P212)

とスバルの心理描写が描かれます。

中高生向けの書籍と考えたら、なかなか踏み込んだシーンですよね。

「かがみの孤城」は性や暴力の描写も多少はある作品だという前提があっても、特にこのシーンは異質で「必要?」と読者が違和感を感じるのは無理はないと思います。

かがみの孤城スバル 血の記憶の意味を考察|スバルの家庭環境

この描写の意図を探るために、スバルの家庭環境を紐解く必要がありそうです。

スバルは、7人の中で唯一昭和から来た中学生です。

生年城に来た時代名前本名
1969年1985年スバル長久 昴(ながひさ すばる)
1976年1992年アキ井上 晶子(いのうえ あきこ)
1992年2006年こころ安西 こころ(あんざい こころ)
1992年2006年
(ハワイから)
リオン水守 理音(みずもり りおん)
1998年2013年マサムネ政宗 青澄(まさむね あーす)
2005年2020年フウカ長谷川 風歌(はせがわ ふうか)
2013年2027年ウレシノ嬉野 遥(うれしの はるか)

スバルは、中学三年生になるタイミングで茨木から東京に引っ越してきて、祖父母と兄と暮らしています。

本人は、「みんなと比べると僕はただ怠け癖で行ってないようなもんで」と言いますが、不登校の背景には劣悪な家庭環境が絡んでいました。

スバルの家族関係

スバルの母が家を出ていき、父も再婚して別の家庭を作って出ていきました。

父はスバルたち兄弟を祖父母に押し付け、祖父はスバルと兄を「出来損ないの兄弟だ」と怒鳴り、育児放棄しています。

祖母は耳が遠く声も小さいのでそもそも会話が成り立ちにくく、食事や洗濯などの最低限の世話はしてくれるものの、スバルの心に寄り添うような存在ではありません。

兄は絵に描いたような不良で学校内外に関わらず暴れ回っていて、弟であるスバルに対しても暴力を振るったりとやりたい放題です。

スバルは、東京の雪科第五中学校に転入しますが、兄の悪評が原因で兄のことを知る高校生にからまれたり、学校で問題児扱いされるなど、こちらでも兄のせいで散々な目に遭わされます。

「兄に半ば強引にやられた」と夏休みに髪を染めて耳にピアスを開けてきましたが、どうやら自分でやったようで、自分を変えたかったのかもなと感じました。

そんな大胆な行動も、家族にも周囲にも引かれる結果となり、兄に大きく反発も出来ず、被害を被りながらも付き従って、自分が誰なのか、どんな人間なのか、個性や存在意義を見失っていきます。

孤立して友達も作れず、学校に対して楽しさや興味を持てずに、スバルは次第に学校に行く意味を見失っていきました。

ということで、スバルの場合は「学校で決定的な何か事件などがあった」というよりは、主に兄の悪行と劣悪な家庭環境が引き金となった不登校だと言えますね。

まだゲームも携帯電話も普及していなかった時代のスバルが皆と積極的に自分の時代のことを会話していたら、それぞれ違う年代から来たことが早々に分かったんじゃないかとも思いましたが、

このような「一般的」といわれる環境からかけ離れた、恵まれない狭い世界で生きていると、何か「おかしいな?」と思っても「きっと自分が知らないだけ」「余計なことは言わない方がいい」と違和感などを押し殺して受け入れてしまう傾向があります。

恐らくスバルにもそんな心理が働いていたのではないかなと思いました。

スバルもアキもいわゆる「親ガチャハズレ」で本人に非がないのに苦しい思いを強いられています。 

昭和の時代はこのような家庭がより多かったとはいえ、親や兄弟に振り回されて本当に腹立たしいですね。

スバルの「血の連想」が表す心理とは?

スバルの家庭環境を念頭に置きながら、こころが見たスバルの記憶を読み解いてみましょう。

スバルは兄や彼女、その友達と交流があることが分かります。つまり、不良と呼ばれる子達ですよね。

兄やその彼女たち、不良がたむろしているような場所に出入りして不良仲間達と交流があり、その中で初体験をしたということでしょう。

「あの子はきっと初めてじゃなかった」と思い出して笑うということは、その子が「今回が初めてだ」と言っていたかどうかは分かりませんが、「やっぱりか」という諦めに近い感情が芽生えたのかなと感じました。

自分にとっては大切なことだったが、この界隈では日常的に行われていることなんだな、という少し芽生えた期待や希望を打ち砕かれた、自暴自棄に近い感情、もしくは侮蔑のような感情も含んでいたかもしれません。

そのような少し青臭い気持ちにフタをして、兄たち不良仲間に入り込んで認められる…。
ある意味スバルにとっては自然で楽な道筋に向かいながらも、そこも自分の居場所じゃないんではないか、というような違和感があったはずです。

スバルは唯一オオカミと戦った

自分にまつわる全てのことを「自分の人生なんてどうだっていい」と自暴自棄に近い状態だったスバルですが、城で皆に出会い、マサムネとの友情やゲームを通じて、自分の人生に対して「まだ何もしていない、何かをやりたい」と感じ始めます。

ゲームを作る人になりたいと定時制の工業高校に進学することを決め、東京都立南東京工業高校から合格通知も届いていました。

アキがルール破った際、城にいたスバルは約束通りオオカミに襲われるのですが、その時に「まだ死にたくない」「生きたい」「皆にも生きてて欲しい」と強い思いを持ってオオカミにシャワーヘッドで応戦して立ち向かいます。

オオカミに立ち向かったのは6人の中でスバルだけ。

初めて自分の意志で、自分の力で切り開いた道を諦めたくない、皆と歩いていきたい、という心の叫びが感じられました。

ここからは筆者の考察ですが、不良と呼ばれるグループに属して自暴自棄に近い環境で過ごしていたスバルが、自分の強い思いを持って、自分のため、皆のために戦える人間に変化したことを効果的に示すために、強烈な印象を残す「あの子が血が出なかったのはー」という描写を入れたのかなと感じました。

ただ、唐突さと露骨さと生々しさでこのシーンだけ浮いている気もするので、兄だけでなく不良グループとの生活を連想させる別のシーンやセリフをもう少し多く入れるとか、他の描き方があったのではないかな?と思ってしまいますが。

「スバル」の本名に隠された伏線

マサムネがゲームの話をしている時に、有名なゲームクリエイターの名前を出して、それをみんなが知らないという展開がありましたよね。

映画では非常にスピーディーに展開してしまったのであまり気に留めていない方も多いと思いますが、小説では下記のようなやり取りが描かれています。

「あん?知ってんだろ?『ゲートワールド』。今超売れてるプロフェッサー・ナガヒサのゲーム。まさか知らねえの?」
「ナガヒサ……?」
スバルが怪訝そうに問い返す声に、マサムネが苛立ったように言う。
「ナガヒサ・ロクレンだよ! ゲーム会社ユニゾンの天才ディレクター」

小説 かがみの孤城

「ナガヒサ・ロクレン」の名前に、スバルが反応しました。

それもそのはず、終盤まで全員のフルネームは明かされませんでしたが、スバルの本名は「長久 昴(ナガヒサ スバル)」と言います。

小説内ではこの「昴」という名前について、スバル自身がこのように説明しています。

父がくれたもので一番好きなのは、スバルというこの名前。
昴。プレアデス星団。別名六連星

 小説 かがみの孤城
プレアデス星団とは?

おうし座の散開星団で、別名六連星(むつらぼしと読むのが一般的)、和名は(すばる)という。
自動車メーカー・SUBARUの名前の由来にもなっており、SUBARUのロゴマークにも「六連星」が描かれている。

  • スバルの苗字は「長久(ナガヒサ)」
  • 気に入っている自分の「昴」という名前は六連星(むつらぼし)を表し、その六連を音読みすると「ロクレン」になる

などの共通点が、「ナガヒサ・ロクレン」が自分と無関係に思えなかったのでしょう。

マサムネの影響でゲームに興味を持ち、将来を決めたスバル

マサムネが持ってきたゲームを一緒にプレイすることで興味を持ち、定時制の工業高校に進学することを決めたスバル。

城での最後の別れの時、鏡に戻るスバルはマサムネに「俺、なるわ。ゲームを作る人」と言っていましたね。

ナガヒサ・ロクレン、工業高校、マサムネへの言葉、これらを合わせて「スバルは大ヒットゲームを作るゲームクリエイターになったんだな」と分かりましたね。

これだけでも充分鳥肌が立つエピソードなのですが、小説には、このスバルの決心の裏にある「スバルとマサムネの友情」がしっかりと描かれていました。

多くの「かがみの孤城」小説読者が「感動した」「何度読み返しても涙が出る」と話す、とても重要なエピソードです。

小説に描かれていたスバルとマサムネの友情

他の6人がオオカミに食べられた後、墓標となった×印に触れたこころは、それぞれの記憶の断片を垣間見ます。

マサムネの記憶には、「このゲーム作ったの、俺の知り合い」と周囲に話したところ、嘘つきと言われて仲間外れにされており、それが不登校の原因になっていました。

映画では、学校の机に「ホラマサ」などと彫られている映像が流れましたね。

小説では、その事実を知ったスバルが、マサムネに対してこう伝えました。

スバルが身を起こす。そして続けた。

「さっきから、考えていたんだ。マサムネのいる2013年は、僕、四十三……、四十四歳?信じられないけど、結構いい年なんだなって。マサムネからみたら、おじさんだよね。つまり、大人」 スバルが笑う。笑って、「だから」と続ける。

「目指すよ。今から。゛ゲーム作る人゛。マサムネが『このゲーム作ったの、オレの友達』ってちゃんと言えるように」

小説 かがみの孤城 p523

「だから、目指せるものができるなら、すごく嬉しい。だから、意地でもそれくらいは覚えたまま、鏡の向こうに帰るよ。約束する。____だから、たとえ、僕やマサムネが忘れても、マサムネは嘘つきじゃない。ゲームを作ってる友達が、マサムネにはいるよ」

小説 かがみの孤城 p524

『このゲーム作ったの、オレの友達』というマサムネの言葉をウソにしないために、スバルは約束を果たして、大人気ゲーム「ゲートワールド」を作る超有名クリエイターになりました。

  • マサムネを嘘つきにしないために、ゲームクリエイターになることを志した。
  • 人生に対して投げやりだった自分に「目指すもの」を与えてくれたマサムネに対しての友情と感謝。

スバルとマサムネの友情が感じられて胸が熱くなりますね。

その他にも細かい伏線や謎が小説には沢山散りばめられているので、映画を見た後に小説や漫画を読むとより理解が深まると思います。

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